2011/04月刊人事マネジメント「この業界の人事に学ぶ 〜インド舞踏家編〜」に紹介されました。

教育:弟子の力を認めなければ公演は見ない

◎お手本は1回限り

カタック・ダンスの基本姿勢は直立姿勢で、足にグングルと呼ばれる真鍮の鈴を100個から200個巻き、力強く軽快にステップを踏むことで鈴の音を奏でる。切れのよい所作と多様な高速の旋回、そして、アラベスク模様をかたどったともいわれるシンメトリーな動きは、激しいながらも実に優美だ。

口唱歌(ヴォイス・パーカション)とアビナヤと呼ばれるパントマイムのような演技も特徴とされる。他のインド舞踊は、アビナヤでは記号化されたムードラ(手印)で表現するが、カタックではムードラを使わず、全身で感情を表現する。そのため、ムードラの意味を知らなくても演技を理解することができる。

舞踏は、もともとビジュアルなものであり、いくら言葉を尽くしてもイメージするには無理があるだろう。佐藤さんが主催する「みやびカタックダンスアカデミー」のホームページのトップページでは、「introduction」で動画をアップしている(https://miyabi-kathak.com/)。これをご覧いただくと、カタックダンスがいかなるものかお分かりいただけるはずだ。
「習い始めて最初の頃は、パズル感覚で学びます。音と自分の身体を動かすパズルワークなんですね。同じことを繰り返しながら、リズムを同じ感覚で刻んでいきます。リズムに合わせてパッと自分が決めることができれば、その小気味よさにはまるはずです」

レッスンでは、先生がまず、見本の踊りをし、それを真似て踊るわけだが、本場のカタックダンスでは他のダンスのように何度も手本を見せてくれることはない。
「インドでは、1回見たことや覚えたことをすぐ次にやらなければなりません。カタックダンスのリズムは、インド数学を基礎にして変拍子の組み合わせでできています。これを先生の1回限りのダンスを見ながら覚えないといけないんですね」
修業時代、佐藤さんは、苦労しながらも数学が得意なこともあってリズムを紙に書き取る方法で記憶した。もちろん、これはインドでのこと。主催のみやびカタックダンスアカデミーではレベルに合わせて丁寧に教えている。

「パズルワークができるようになると、身体をどうするか、視線をどう表現するかなど、基礎のリズムだけでなく、ちょっとしたバリエーションも少しずつできるようにします。与えられたものをどう表現していくかということです」
そして、公演での経験を重ねるなかで、さらに表現を模索しながら踊ることが重要なのだという。日本の舞踏や演劇の世界では、弟子の公演を見て、師が論評して教育するのが一般的ではないだろうか。しかし、インド舞踏はそうではない。
「師は弟子の力を認めなければ公演を見に行くことはしません」その教育のあり方は想像以上に厳しい。(続く

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